いつの時代においても企業活動する上での生産性向上は、常に追いつづけるべき課題です。

近年、国内の労働力人口の減少に伴う働き方改革、デジタル技術革新によるDXの潮流、新型コロナウイルスの感染拡大によるワークスタイルの変化、サステナビリティやESGへの対応など、企業を取り巻く環境は激変しています。企業は以前と比較し、どこで・どのように働くか、制度はどうするかなどを模索しながら、その上で生産性向上という壁にぶつかっています。

この記事では、改めて生産性についての定義や指標を解説し、IT活用やDXとの関係性について触れていきます。

目次

日本の労働生産性は低い

まず、なぜ日本企業が労働生産性を上げなくてはいけないのか? 働き方そのものが外部環境の大きな変化で生産性の維持・向上を余儀なくされていることもありますが、そもそも国際的視点で日本の生産性は低いという事実があります。

OECD(経済協力開発機構)が公表している「労働生産性の国際比較」のデータベースをもとに、毎年分析・検証をしている公益財団法人 日本生産性本部によると、2020年の日本の1時間あたりの労働生産性は49.5ドル(5,086円)で、OECD加盟の38カ国中23位。また一人当たりの労働生産性は78,655ドル(809万円)で28位でした。この順位は1970年以降では、もっとも低い結果となっています。[※1]

また2020年は世界的な新型コロナウイルスの感染拡大により、前年比での労働生産性上昇率でプラスとなったのは8カ国のみでした。日本は前年度比で-3.9%となっており、上昇率では29位という結果です。

※1…公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2021」


生産性を上げなくては生き残れない

日本の生産性を語る上で、OECDのデータは大きな指針となります。日本は1970年代より横這いでしたが、DXやコロナ禍でさらに順位を下げる結果となりました。

従来の企業活動は、増加する労働力人口と長時間労働で生産性の低下を補えていました。しかし、生産年齢人口※2が減少に転じ、少子高齢化社会に突入すると介護などの事情でフルタイム勤務できる数も減ります。生産年齢人口は今後も減少が予測され、相対的に労働力人口も減少の一途をたどるでしょう。そのため一人当たりの労働生産性を上げ、ワークライフバランスと多様化した働き方を実現しなくてはいけません。

この背景が働き方改革となり、様々な課題を解決する手段としてのIT活用、そしてDXに注目が集まったというのがここ3〜4年の流れです。

※2…労働意欲の有無に関わらず日本国内で労働に従事できる年齢の人口。日本では主に15歳から65歳未満の年齢に該当する人口を指します。

関連資料:企業がDXにおいて考えるべき視点や、 着手すべき課題について解説

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労働生産性の指標や計算式について

日本の労働生産性が低いことを指摘しましたが、そもそも労働生産性とはどのような指標を見ればいいのでしょうか? 改めて労働生産性の定義について解説します。まずは基本的な生産性については下記で表せます。


生産性=産出(アウトプット)÷投入(インプット)

有形無形問わず商品やサービスをつくる際に、設備、土地、建物、エネルギー、人件費がかかります。これらを生産要素と呼び、投入した生産要素によって得られる産出物の割合が生産性となります。投入量を低くして、産出量が増加すると生産性が高くなります。

生産性でも様々な指標を確認することで、それぞれ異なる事実が見えてきます。どのような生産性指標があるのか、解説します。


物的生産性と付加価値(資本)生産性

生産性は、さらに物的生産性と付加価値(資本)生産性の2種類に分けられます。基本的な計算式は上記の通りになりますが、産出と投入の値によって指標が変わります。

物的生産性は、労働の視点から産出した数量で、「生産量÷労働者数」の計算式では一人当たりの産出量を導き出せます。一方で、「付加価値額÷労働者数」の計算式ですと、一人当たりの産出額を導き出せます。さらに計算は複雑になりますが、全要素生産性(TFP)といった指標もあります。


その他の生産性の指標

その他、生産性を表す指標はいくつかあり、ここでは財務視点でモニタリングすべき指標を紹介します。


労働分配率

付加価値額のうち給与などの人件費が占める割合を示します。「労働分配率=人件費÷付加価値額×100」の計算式で、高すぎると人員過剰になっている可能性があり、人的資源の最適な配分などを検討する必要があります。一方で、低いと従業員の待遇が悪い可能性が生じます。あくまで複数の指標とともに評価していき、自社の状態を分析するのが良いでしょう。


有形固定資産回転率

労働分配率は、人的資産に対する生産性を表す一指標ですが、有形固定資産回転率は、建物、土地、設備投資などが効率的に活用できているかの指標となります。

「有形固定資産回転率=売上高÷有形固定資産×100」の計算式となり、この数値が高いほど設備の生産性が高く、有効に活用できていると言えます。


労働装備率

従業員一人あたりに対する設備投資額を見る指標になります。「労働装備率=有形固定資産÷従業員数×100」の計算式となっており、この数値が高いほどIT〜デジタル機器の活用や各種設備が行われていると言えます。業界によって大きく数値は異なりますので、一人当たりの設備投資を見ながら、有形固定資産回転率もチェックして効率よく活用できているかを分析すると良いでしょう。


その他、生産性にまつわる財務指標

その他の財務指標で生産性や企業の稼ぐ力として見られる指標にROA、ROE、ROICなどがあります。投資家向けの指標であり、財務の専門的な分野となるので詳しい言及は避けますが、経営状態の把握や生産性を確認する指標として用いられます。


生産性は多角的に分析することが重要

生産性にまつわる指標を紹介しました。これらの指標は、自社の状態を把握するために用いられ、分析することで課題抽出ができ、改善するターゲットも定められます。例えば、一人当たりの労働生産性が低いので設備投資をしたが、有形固定資産回転率が悪いとなると、原因は導入したツールやソリューション、機器などが現場で有効活用されていない、という仮説が立ちます。

一概に労働生産性といっても業界、業種ごとに数値は大きく変化しますので、多角的に分析することで課題を抽出できるでしょう。

DX・IT活用と生産性向上の関係

では、DXやIT活用と生産性向上はどのような関係性にあるか、解説します。


守りのDXと攻めのDX

経済産業省によるDXの定義は、下記です。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

(引用:経済産業省「DX推進ガイドライン」

DXを推進できない原因のひとつに費用対効果がわからない、何から手をつければいいかわからない、との声があります。それはDXという単語に様々な取組が内包されており、理解が及ばないことが挙げられます。

DXの取組は2つに分類できます。いわば社内向けと対顧客(社外)向けの取組で、前者は「守りのDX」、後者は「攻めのDX」と呼ばれることもあります。


守りのDX

業務の効率化、業務プロセスの改革、データ活用による経営判断・業務スピード向上など


攻めのDX

既存商品・サービスの提供価値向上、顧客体験(CX)の変革、イノベーションの創出、ビジネスモデルの変革など

では、守りのDXと攻めのDXがどのように生産性につながるのか、見ていきましょう。


守りのDXで効率化をし、攻めのDXで価値をあげる

守りのDXは、クラウド勤怠やWeb会議システムなど各種クラウドサービスなどを導入・活用することで業務効率を上げます。業務を効率化することで、ひとつの作業に投入する工数は下がり、付加価値額が変わらなければ労働生産性が向上します。社内でDXが推進されることで、この効果は大きくなるでしょう。総務省が発表している「企業活動におけるデジタル・トランスフォーメーションの現状と課題」では、テレワーク導入企業と未導入企業、クラウドサービス導入企業と未導入企業の労働生産性の比較を発表しています。[※2]

労働生産性の比較
労働生産性の比較

部分的なIT活用でも生産性向上に大きく寄与していることがわかります。

また攻めのDXは、付加価値額を上げていく運動になります。守りのDXで業務の効率化を果たし、攻めのDXで付加価値を上げていく、これが基本的なDXの姿と言えるでしょう。しかし、国内で攻めのDXを実践している企業はまだまだ少ないのが現状です。

DX推進は、守りのDXから攻めのDXに移行していく、もしくは同時並行的に進め、指標を確認しながら改善していくことが求められます。第一歩目は、まず自社の現状把握と課題の抽出をし、業務効率化を図っていくことになるでしょう。

※3…総務省「企業活動におけるデジタル・トランスフォーメーションの現状と課題」

DXは闇雲に着手してもダメ

DXに着手するに当たって、「なんとなく」「とりあえず」で始めると失敗してしまいます。しかし、目的を定め、段階的に着手することで、確実に生産性を向上させることができます。

コネクシオでは、課題の整理、プランニング、最適なデバイス、ツール、ソリューションの選定・調達から、運用後のサポートまで一貫して支援するマネージドモバイルサービスを提供しています。

DX推進を進めたい、生産性に課題を感じてらっしゃる場合は、ぜひお問い合わせください。

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