ワークスタイル革新における評価制度
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ワークスタイル革新における評価制度
ワークスタイル革新を始める際、そして始めてから大きな壁となるのが評価制度です。
今までに取り上げてきましたテレワークなどの新しい働き方を、会社として実践することを決定したのに、蓋を開けたら利用者がいない!?
この問題に立ち往生をしている会社も少なくはないはずです。
そこで、本稿ではテレワークを軸に新たな働き方を導入する際の評価制度における課題と対策についてお話します。
テレワークの類型
テレワークには、「在宅勤務」「モバイルワーク」「施設利用型」の3つに分類できます。
◇在宅勤務:自宅を就業場所として勤務します。
◆モバイルワーク:いつでもどこでも、情報端末を利用し、自由に仕事をします。
◇施設利用型:本社とは別の場所にサテライトオフィスやテレワークセンター、スポットオフィス等を就業場所とします。
また、在宅勤務の働き方として、「完全在宅勤務」と週ないし月で一定の日数、期間を在宅勤務とする「終日在宅勤務」があります。
テレワークのメリット

テレワークは企業側、従業員側双方にメリットがあります。
企業にとっては、経費のかかる職場スペースの縮小、資料のデータ化による業務効率の向上と経費削減、優秀な人材が育児や介護のために離職していくことを防ぐなどがあります。
また、災害時やパンデミックによる危機に対してBCP(事業継続計画)のための有効な手段としても認められています。何よりも超高齢化・少子化社会を見据えての労働力の確保につながります。
従業員にとっては、育児や介護のために仕事を辞めずに済むので経済的な安定をはかることができる、適度なワーク・ライフ・バランスにより人生をより豊かにできる、といったことがあります。
テレワークの課題
前述のようなメリットは今後の日本社会が迎える深刻な事態に対しての、処方箋として評価され、国もテレワークの拡充に力を入れているのです。
深刻な事態とは、世界のどの国でもこれまで経験したことがない少子高齢化です。
総務省の「平成26年度版情報通信白書」によると、2010年で日本国の人口1億2,806万人の内65歳以上の人口は23.0%、2060年予測では全人口は8,674万人、内65歳以上の高齢者比率は39.9%と予想しています。人口減少に歯止めをかけるには子育てしながら仕事ができる環境が必要です。同時に高齢者を介護しながら働くことが出来るようにすることも考えなくはなりません。
2013年政府は、終日在宅で勤務する「在宅型テレワーカー」の数を2020年に全労働者人口の10%以上にする指針を打ち出しました。
しかしながら現状では、週1日以上終日在宅勤務を行う労働者数は260万人と、全労働者の4.5%にすぎません。(平成25年度、国土交通省調べ)
一体何がテレワークの進展を妨げているのでしょう。
幾つかの要因はありますが、そのひとつが評価制度の問題です。現在のICT技術を背景に、外回りの営業社員は当たり前にテレワークと同様の業務を行っています。ところが、これを制度とすると問題が発生します。
まず管理職が、マネジメント(管理)ができず、評価できないことを嫌がります。そこで評価制度を変えようとすると、それは難しいと判断され、頓挫してしまうのです。
一方、現場の社員からは、上司がいないと十分な打ち合わせ、相談ができない、指示・判断を仰げないと不満が出ます。
労働組合側からも、サービス残業が増えるのではと反対の意見が出ることもあります。

こうした、<strong>「できない理由」</strong>ばかりを論っても、近い未来に到来する労働力の脆弱化に対抗手段は生まれ得ません。管理職は「監視者」ではありません。直接見ていなくても、管理・評価は可能です。指示命令の出し方受け方も代替手段はあるでしょう。サービス残業が増えるという意見に対しては、極端な言い方をすれば「残業禁止」にしてしまえば防げるはずです。
テレワークの働き方を必要としている人も大勢います。
同時に整備されたテレワーク環境が必要とされる未来もすぐそこに来ているのです。
テレワークにおける評価制度
テレワークの勤務体制に応じて評価制度を決定します。
週に1,2日程度の在宅勤務で、会社で働く時間のほうが長い場合は、従来通りの人事評価制度で適用できるでしょう。
モバイルワーク等、会社で働く時間よりも外部や自宅で働く時間が多い場合は、目標管理制度に基づく成果主義の適用が考えられます。
目標管理制度は、売上や顧客訪問件数のように成果を数値化しやすい営業部門には適していると言われます。
企画開発部門など長期的に目標を設定する部門の場合は、短期的に成果を数値化するのが困難な業務もあります。この場合、制度そのものと併せて、管理者のスキルも必要です。
目標管理制度のポイントは担当者自身が目標を設定し、達成方法を考え、主体的に業務を遂行するよう管理する形態です。担当者自身が目標を設定すると言っても、低すぎては事業計画そのものが達成できませんし、高すぎても負荷がかかりすぎ、達成できずやはり事業計画を歪める結果を引き起こしかねません。
重要なのは期待する水準を事前に示し、目標を設定し、管理者と勤務者が共有することです。
判断には具体的な事実(数値やカウント可能な量)のみを材料とし、感覚や推測などの事実確認ができないもので評価をしてはいけません。業務の達成度は一定の期間で確認し合い、遅滞しているようであれば、管理者はその理由を確認し、アドバイスしてあげることが大切です。これは通常の勤務でも在宅勤務でも変わりはありません。
テレワーク勤務者の不安を解消する
テレワークによる働き方が勤務者の現在の生活条件にマッチしており、望ましい働き方であったとしても、人事評価で不利益になるのではないかという不安を抱くことが多いようです。実際に在宅勤務の導入について二の足を踏む企業も、この点を理由に上げることが多いのです。
テレワーク従事者の評価に対しての不安を解消するためには、評価の方法が公開され、従業員が納得できる、客観的で合理的なものでなくてはなりません。また制度だけに頼るのではなく、目に見えない部下の仕事を評価するために、管理者と在宅勤務者が事前に業務内容や評価方法についてしっかりと打ち合わせをすることが大切です。
テレワークに移行しやすい業務として営業や、事務的な作業などが挙げられるでしょう。評価指標としやすい数値や成果物で仕事の達成度をはかることができるからです。しかし今後の労働人口の低下を子供や介護者を抱える女性たちで補うと考えると、人事や総務などの定量での評価がしにくい職種についても、テレワークへの移行が必要とされることが予測できるでしょう。
この時に必要なのは、評価指標と、管理者の意識の改革であると言えます。
何のために新たな働き方を取り入れるのか。この根幹部分についてのベクトルを同じ方向に向けていくことが重要でしょう。
浸透させ定着化を推進させるには、この部分をしっかりと固めることが成功の秘訣です!
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