はじめに

新型コロナウイルス感染拡大によって、企業や行政のDX(デジタル・トランスフォーメーション)ニーズは加速度的に高まっている状況です。店舗型事業者はオンライン購買体験の構築を急ぎ、訪問型営業を行っていた企業はオンライン接客システムの導入を進めるなどの動きが見られます。

一方で、その障害となるのが企業の現場オペレーションにフィットした古いシステム、いわゆるレガシーシステムです。10年以上も前から稼働しているシステムは、現場の業務を進めるにあたっては問題がないものの、障害発生時に対応できる人材の不足や、システム自体の拡張性の問題で、ビジネスの推進を大きく損ねていると言えます。

そこで注目されているのが、「マイグレーション」と呼ばれるDX手法です。本記事では、このマイグレーションについて、具体的な進め方や成功のポイント、そして国内での成功事例を、それぞれ解説します。

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マイグレーションとは

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マイグレーション(migration)とは、ひと言で表現すると「システムの移行手法」です。ソフトやハード、およびその中で蓄積・流通するデータ等の情報群を、新しく構築したシステム環境へと移行するプロジェクトとなります。

一般的な「システム更改」が業務の一部分を担うシステムの移行であるのに対して、マイグレーションはシステム基盤そのものが刷新の対象です。

マイグレーションの種類

マイグレーションには、その範囲に応じて2種類のアプローチがあります。

データマイグレーション

システム上で管理されているデータ群を移行させることを「データマイグレーション」といいます。

新しい移行先のデータベースに合わせたデータフォーマットに変換するのはもちろん、中長期的にさまざまな周辺システムとの連携ができるように拡張性ある形でデータアーキテクチャを設計することも、データマイグレーションを進めるうえで重要なポイントとなります。

レガシーマイグレーション

システム基盤そのものを移行することを「レガシーマイグレーション」といいます。

とくにレガシーマイグレーションの対象となるのが、古い技術や設計のもとで構築されている機関システム、いわゆるメインフレームでしょう。APIなどを活用したシステム連携の概念が十分に出来上がっていない時代に構築されたものだからこそ、オープンでモダンな環境へと移行させることが、レガシーマイグレーションの重要なミッションとなります。

モダナイゼーションとの違い

マイグレーションと似た概念として「モダナイゼーション」があります。

言葉そのものは「現代化」や「近代化」などと訳されるものですが、こちらはマイグレーションの上位概念として、システムの刷新を示す手法だと言えます。つまり、現在稼働しているシステムの仕様やIT資産自体はそのまま活用しながら、最新の拡張性ある技術に置き換えて対応できるようにするものです。

マイグレーションがメインフレーム時代から存在する概念であるのに対して、モダナイゼーションは、すでにモダンでオープンな環境で構築されたシステム基盤を最新のハードとソフトへと移行させてビジネス競争力を上げるために打ち出された概念です。

関連記事: DX推進に必要なモダナイゼーションとは?成功のポイントや進め方を解説!

マイグレーションの進め方

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次に、マイグレーションの進め方を見ていきましょう。ここでは、システム基盤そのものを移行させるレガシーマイグレーションの進め方3手法について説明します。

リホスト

マイグレーション手法の中でも、最も部分的な進め方が「リホスト」です。言語やプログラムといったソフトウェア関連には基本的に手を加えず、プラットフォームとなるハードウェアだけを移行対象にします。移行の負荷が少なく、既存の業務で活用されているプログラムを継承できる点がメリットです。

リライト

リホストがプラットフォーム更改であるのに対して、「リライト」は、言語やプログラムといったソフトウェアが移行対象です。具体的には、COBOLなどの古くて枯れた技術から、よりモダンで拡張性のある言語へと書き直す方法をいいます。既存のプログラムロジックをある程度継承でき、そのうえで新しい技術の恩恵を受けられる点がメリットです。

リビルド

リホストやリライトはそれぞれメリットがある一方で、これまで蓄積されてきた保守性の低さや開発コストの上昇までも引き継いでしまいます。

リソース的に可能であれば、言語やプログラムといったソフトウェアと、プラットフォームとなるハードウェア、どちらも抜本的に見直して再構築する「リビルド」が良いでしょう。プロジェクト期間は最も長くなる傾向にありますが、完了した際はシステムオペレーションのみならず、ビジネス競争力の向上にもつながることが期待されます。

マイグレーション成功のポイント

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では、マイグレーションを成功させるにはどのような点に気をつければ良いのでしょうか。以下、ポイントを3つご紹介します。

事前準備を入念に行う

当然のこととも言えますが、マイグレーションプロジェクトを進めるにあたって入念な事前準備は不可欠です。とくに現行のIT資産がどのように構築され運用されているのかを、細かく可視化する必要があります。これを怠ると、プロジェクトの途中で想定漏れが発生して進行に手戻りが発生するだけでなく、中長期的な運用コストも高まってしまうでしょう。

自社に適した方法で進める

マイグレーションにはさまざまな進め方がありますが、自社に適したやり方を選択することが重要です。

たとえばプロジェクト人員が少ないなかでリビルドを実行すると、リソース不足でスムーズに進行できない、頓挫するなどのリスクが高くなります。また、プロジェクトに十分な予算を割けない場合は、リホストなどの部分的な対応から初めるなどの判断が必要です。

ハードウェアのリース更新時期に実行する

主にリホストかリビルドを進める場合は、ハードウェアのリース更新時期がプロジェクト実行の目安となります。とくに古いハードを使用している場合、サポートが終了するケースも考えられるため、事前に更新作業が必要だとわかっているリース更新時期に照準を絞ってプロジェクトを進めるのが良いでしょう。

マイグレーションの国内成功事例

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最後に、実際にマイグレーションを成功させた国内事例を2つご紹介します。

アサヒグループホールディングス株式会社

課題

2011年に純粋持株会社に移行したアサヒグループホールディングス株式会社では、グループ内のIT資源を集約し、共通のシステム基盤を整備する方針をとりました。そのなかで、ほぼ半世紀にわたって基幹システムとして稼働していた「ACOS-4」というレガシーシステムが、システム統合の大きな障壁となりました。

対策

そこで複雑化したホストシステムの非効率性と過大な運用コストを解決すべく、キヤノンITソリューションズのマイグレーション・ソリューションを採用。IDLⅡ、COBOL/S、Natural、Easyといった第四世代言語をCOBOLに変換していき、レガシーシステムからオープンシステムへと移行させることで、高品質でコストパフォーマンスの高いマイグレーションを、スケジュール通りに完了させることができました。

参考:キャノンソリューションズ株式会社「事例紹介

株式会社LIXIL

課題

建築材料・設備機器業界の最大手である株式会社LIXILでは、メインフレームのレガシー化に伴い、脱ホストを推進すべく、マイグレーションプロジェクトを立ち上げてリホストに着手しました。そのなかで、DBアクセスのコーディングと独自の簡易言語(RSP-COBOL)をそのまま使用し、かつ膨大なベンダー制作プログラムを漏れなく確実に変換することが、大きなハードルとなっていました。

対策

そこでキヤノンITソリューションズのマイグレーション・ソリューションを採用。カットオーバー前のホストとの並行稼働では、ホストからのデータ移行や処理後出力ファイルのコンペアを自動化する仕組みを構築し、工数削減はもとより、確実な品質検証を実現しました。結果、問題なくサービスインを迎えることができ、その後の不具合も0件にできました。

参考:キャノンソリューションズ株式会社「事例紹介

まずは現状を整理し、自社に合った方法の選択を

今回はマイグレーションの概要や具体的な進め方、成功のポイント、そして国内での成功事例について、それぞれ説明しました。マイグレーションを行う場合、まずは既存のシステムおよび現場運用の状況を可視化したうえで必要に応じて業務プロセスの改善が必要となります。

コネクシオでは、自社の業務プロセスを改善したい企業様へ、モバイルを活用したソリューションを中心に様々なツールをご提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。

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